新築でもリフォームでも、最も大切なことはなんだろう?と考えたことがありますか。
それは、「どんな暮らしがしたいのか」とイメージすることだと思います。
このイメージのタネは、普段の暮らしの中に眠っています。しかしそのタネは日常という土に埋もれていて、なかなか発芽することはないのです。それどころか、そのタネの存在すら忘れかけている多忙な日々。
しかし、そんな日々の過ごし方に何か違和感を覚える方がいらっしゃいます。その違和感とは、理想とのズレのようなイガイガとした内部感覚。
このマンションリフォームも、そんな違和感を覚えた方からのデザインの依頼でした。「新築マンションなのにパンフレットを読んでも自分たちの暮らしがイメージできないのです」というのがそもそものスタートでした。ヒアリングしてみると、マンションの立つそのエリアだけが気に入っていて、マンションのデザインが気に入っているわけではないというシンプルな事実が浮き彫りになってきました。「どんな暮らしがしたいのですか?」という質問に対する答えは、「和的なスタイルが希望なのです」というもの。マンションのデザインはゴージャス&モダン! そのギャップを埋めることが、私たちのデザインテーマとなりました。
そして誕生したのが、下の写真のような和モダンなデザインです。素朴な自然素材と和の要素をなじませています。予算にも限りがあり、その上新築マンションですから、浴室や玄関など、使える物は使い、新たに挿入する和の要素とのバランスを取るように心がけました。
誰の心の中にも、理想とする「イメージのタネ」は眠っています。
普段からその存在を気にかけておいて、そのタネの内容を理解し、静かに育て、
そのタネが含んでいる「大きな意味」まで掘り下げておくことが大切なように思います。
もしくは、このマンションのリデザインをご依頼いただいたO様のように、
心を自然に開いていただき、自分たちの思いを素直に語っていただくのが
いいように思います。
もちろん、デザインを依頼される側にも、その「イメージのタネ」をキャッチする
ような心の働きが必要になってきます。
建主のそのタネを無視して、自分のタネを誕生させるのは決して得策ではありません。
デザイナーは常にニュートラルな状態で新しい意味世界の構築へ向けて一歩を
踏み出す心構えをしておく方が、豊かなデザインを行うチャンスも
広がると思うからです。
ユーザーのイメージをデザインする。
そんなインクルーシブデザイン※を、もっともっと心がけていきたいと思います。
※インクルーシブデザインとはイギリス発のユニバーサルデザインです。ブルースカイ状態でワークショップを行い、 そこで発見されたユーザーの気づきや思いをデザインしていくというデザイン手法を推進しています。
● 「浄水通りの和モダンマンションリノベーション」
設計:湊一朗
施工:クリエイト
コーディネート:プロトハウス事務局
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