それは、畑を耕し、立ち寄る人と季節を語らい、花を愛で、食事をつくり、余った野菜をとっておき、
月に一度、ご近所のお年寄りのためにスープをこしらえて届ける暮らし。

建主のHさんは、この行事に月末スープと名付けて、毎日を楽しく暮らしています。
その話を朗らかな笑顔で話すHさんを見ていると、
多くの生命を取り上げてきた人の、神聖で凛とした姿に癒されてしまいます。
足るを知り、無功徳に生きるHさんのための5.5坪の平屋。
それは、〝今、此処〟の境地で暮らす人が出会った、必要にして最小限の空間なのだと思います。
デザインした私がこう言うのも可笑しいのですが、
この家のプランが先に在り、それがHさんを引き寄せたこともあって、そんな気がするのです。

そんなHさんのご厚意で、
この5.5坪の小さな住まいの暮らしの見学会を開催させていただきます。
場所は世界遺産にも登録された宗像、
その神秘に包まれた島や海原を見下ろす里山丘陵地帯です。
近隣には野山や田園、禅寺もあって、日本の原風景が残っています。

小さな教会を思わせる凛とした空間。
キッチンはこの住まいのサンクチュアリ(聖域)。
タイルや棚、ペンダントライトも好きな物で設えました。
風の時代と言われる今、すべての価値が洗い直され、
アスタリスクの付いた幸福や平和というものに自問自答する人が増えています。
自分自身の羅針盤を足元に掘って、自分が正しいと思う道へと向かって歩き出す
そんな生き方を選択する人が多くなってきたように思うのです。
本当の意味で、自分を自由に開放するライフスタイルですね。
Hさんと話していると、
日々の楽しみの先に、人生の目的が見えてくるのだと教えられました。
じっくり、ゆっくりでいいから、〝今、此処〟を楽しみ、笑って生きていたら、
スープで温まるお年寄りたちが居るように、
いつかどこかで、きっと誰かが喜んでくれるのだと感じるのです。
この平屋には、ロフトが付いていて、
そこを寝室にすることもできるのですが、Hさんはその場所を収納にするのだそうです。
キッチンは幅2400mmのスタンダードサイズ。延床面積5.5坪なのだから
ミニキッチンでいいのでは? と想像される方も多いことでしょうが、
月末スープを創作するHさんにとってクッキングスペースは最優先の場所。
言わば神域です。調理の神様が降りてくる神聖な場所ですから疎かにはできません!
だからこそ、最低でもこのスタンダートサイズが必要だったのです。

ミニマムな空間でも、日々の楽しみを好きな処にレイアウトすると、
目的に叶った住まいになります。そして、暮らすための設えのある家が誕生します。
〝住まいは人生を変える最高の道具である〟という思想は自明なのです。
今、人生を選ぶのは、自分。
在るのは、自由。日々の楽しみだけです。
「この家は夜も素敵なんですよ」とHさん。
※ 新型コロナウイルスの感染症対策のため完全予約制にて開催させていただきます。


[ 『家づくりガイド』がもらえる〝家づくり相性診断〟は ]

※家づくりで実際に起こったコワーイ話しを紹介するとともに、そのようなことにならないような具体的なアドバイスを記載。とっても読みやすく、これから家を建てようかな?と思っている方にはぜひお勧めの一冊です☆
アマゾンサイトでのご購入はこちらまで
インクルーシブデザイン/社会の課題を解決する参加型デザイン
発行/学芸出版社 価格/2,300円+税
誰かのためのデザインから、誰もが参加できるデザインへ。
子ども、高齢者、障がい者などマイノリティだと考えられてきたユーザーをデザインプロセスに積極的に巻き込み、課題の気づきからアイデアを形にし、普遍的なデザインを導く「インクルーシブデザイン」。
これからの「ものづくり」と「デザイン」の実践例を多数収録。家づくりにもこの視点が大切です!
デザイナー、エンジニア、建築家、プロダクトメーカー、必読。
プロトハウス事務局代表の桑原あきらも共著者として参加しています。